外壁を軽くこすった時に手のひらに白い粉がつく現象を、業界では「チョーキング」と呼んでいます。塗料に含まれる顔料や骨材が、紫外線や雨風にさらされ続けることで塗膜の樹脂成分が徐々に劣化し、表面に粉状となって浮き出てくるものなんです。
これは決して珍しいことではなく、屋外に置かれた塗装物であれば、いずれ起こりうる自然な経年変化のひとつです。ただ、名前も仕組みも知らないまま突然この粉に触れてしまうと、「汚れているのか」「何か異常が起きたのか」と不安になってしまう方が少なくないんですよね。
前職の頃、長野県のあるお客様からお電話をいただいたことを今でも覚えています。「外壁の汚れを拭き取ろうとしたら、雑巾も手も真っ白になってしまって。もしかして業者に安い塗料を使われたんじゃないか」と、かなり動揺した様子でお話しされていました。
お話を伺い、現地の状況を確認させてもらうと、塗装から十年近く経過した外壁に自然に現れたチョーキングでした。安い塗料を使われたわけでも、施工に問題があったわけでもない。そう説明すると、電話の向こうで大きく息をつかれていたのが印象に残っています。知らないというだけで、これほど不安になってしまうものなんだなと感じた出来事でした。
チョーキングは塗膜の防水機能が弱まってきているサインではあります。ただ、粉が出ているからといって、その日のうちに契約を急ぐ必要があるとは限りません。粉の量や色ムラの程度、外壁のひび割れの有無なども合わせて見ないと、本当の状態は分からないんですよね。
中には、この現象を持ち出して「今すぐ工事しないと雨漏りします」というように、必要以上に不安を煽ってくる業者がいるという話も耳にします。もちろん放置していい話ではないのですが、まずは落ち着いて、複数の視点から状態を確認する時間を持っていただきたいと思っています。
点検を依頼する際は、粉が出ている範囲が外壁全体なのか一部なのか、方角によって差があるかどうかを聞いてみてください。日当たりの強い南面と、日陰になりやすい面とで劣化の進み方が違うことは珍しくありません。
また、粉の状態だけでなく、下地のひび割れや目地のコーキングの傷み具合まで含めて説明してくれるかどうかも、業者を見る一つの目安になります。表面の粉だけを理由に急かす説明ではなく、家全体の状態を踏まえて話してくれるかどうかを、ぜひ確認してみてほしいんです。