外壁塗装の契約書には、工事金額のほかに支払い方法や支払い時期が記載されます。ここで「現金なら値引きします」と持ちかけられると、お得に感じてつい頷いてしまう気持ちはよく分かります。ただ、なぜ現金だと安くなるのか、その理由まで説明してくれる業者は多くないんですよね。
前職で窓口業務をしていた頃、こうしたご相談を受けたことがあります。契約書に記載された金額と、実際に現金で支払った金額の内訳が食い違っていて、後になって「言った・言わない」の水掛け問答になってしまったのです。書面に残らないお金のやり取りは、トラブルが起きたときに何よりも心細いものだと痛感しました。
長野県にお住まいのお客様から、以前こんなお電話をいただいたことがあります。契約時に「現金一括なら値引きします」と言われ、言われるままに現金を用意して手渡したところ、渡した金額と契約書に記された最終金額との間に、値引き分がどう反映されているのか分からない部分があることに、後から気づいたそうです。領収書はもらっていたものの内訳が曖昧で、確認しようにも相手と連絡が取りづらくなっていたと、電話越しに困り果てた声で話してくださいました。
悪意があったのかどうかは、私にも分かりません。ただ、現金でのやり取りは記録が残りにくく、双方の認識にずれが生じたときに確認する手立てが乏しくなってしまいます。数万円という金額は、決して小さなものではないはずです。
資金繰りの都合で入金を早く確定させたい、という事情もあるでしょう。振込手数料を避けたいという理由もあるかもしれません。ですが中には、売上を正確に計上したくないという、あまり褒められない動機が背景にある場合も否定できません。こうした業者ほど、契約書の金額と実際のやり取りにズレが生じやすい。業界に身を置いて20年、私が肌で感じてきたことです。
もちろん、現金払いを希望すること自体が悪いわけではありません。大切なのは、値引きの理由や内訳がきちんと書面に反映されているかどうかなんです。
値引きそのものは、悪いことではないと思っています。ただ、口約束ではなく、契約書や見積書にしっかりと反映してもらうこと。それが何より大切です。「現金だからいくら引きます」ではなく、「最終的にいくらお支払いいただきます」という金額を、書面で確認する。それだけで、後々のトラブルはずいぶん防げるはずです。
弊社でも加盟店をご紹介する際には、支払い条件を含めて契約書にきちんと明記されているかを確認していただくよう、お伝えしています。小さなひと手間ですが、この一手間が数年後の安心につながるのです。