外壁塗装の見積書には、たいてい「足場架面積」という項目があります。これ、多くのお客様が「延床面積とだいたい同じだろう」と思われるんですが、実はそうではありません。建物の外周に沿って足場を組む都合上、実際の壁面よりも少し広めに数字が出るのが普通なんです。この「広げて計算する係数」のことを、業界では「掛け目」と呼んでいます。
たとえば延床30坪の家でも、足場面積として出てくる数字は40坪前後になることがあります。これ自体はおかしなことではなく、足場という構造物の性質上どうしても生じる差なんですよね。ただ、この説明を受けないまま見積書だけを渡されると、「面積を盛られたのでは」と不安になるお客様がいらっしゃるのも無理はないと思っています。
前職時代、静岡県にお住まいのご夫婦から「A社とB社で足場の面積が全然違うんです」というご相談をいただいたことがあります。同じ家なのに、片方は35坪、もう片方は48坪。数字だけ見ると、どちらかが不当に高く盛っているように見えますよね。
お話を伺っていくと、実は計算方法そのものが違っていました。一方は延床面積に近い数字をそのまま使い、もう一方は外周長×高さで実測に近い形で算出していたんです。どちらが正しいというより、計算のやり方が違うだけで、結果として金額の見え方が大きく変わってしまう。この話をご夫婦にお伝えしたとき、「そんなことも知らずに、安い方が誠実なんだと思い込むところでした」とおっしゃっていたのを今でも覚えています。
足場は建物の壁にぴったり沿って組むわけではなく、作業スペースを確保するために少し外側に張り出して組みます。出窓やベランダ、玄関のひさしなどがあれば、その分さらに面積が増えることもあります。屋根の形状や隣地との距離によっても、組み方は変わってきます。
ですから、足場面積が延床面積より大きく出ること自体は、それだけでは業者の良し悪しを判断する材料にはならないんです。問題なのは、その計算根拠を聞いても答えてもらえない、あるいは毎回説明が変わる、というケースの方だと思っています。
私がお客様にいつもお伝えしているのは、「足場面積が何坪か」だけでなく、「どうやって算出したか」を一言聞いてみてくださいということです。外周の長さと高さから出しているのか、延床面積に係数をかけているのか。ここを説明できる担当者は、社内で計算方法が統一されている証拠でもあります。
逆に、聞いても「決まりなので」としか答えが返ってこない場合は、少し立ち止まってもいいかもしれません。数字そのものの大小よりも、聞いたときにきちんと言葉で返ってくるかどうか。ここに、その会社が現場をどう見ているかが表れる気がしています。
先日も、複数社から見積もりを取ったお客様が「足場だけ電話で聞いてみたら、対応の丁寧さが全然違った」と話してくださいました。金額の比較だけでなく、こうしたやり取りの中にも業者選びのヒントは隠れているんだと思います。