外壁塗装と聞くと、塗料や色、職人の腕といった話ばかりが気になってしまうものだと思います。ですが、築年数がある程度経ったお住まいの場合、下地材やコーキング材、既存の塗膜にアスベストが含まれている可能性があるんですよね。
2022年以降、一定の解体・改修工事では、着工前にアスベストの有無を調べる「事前調査」が法律で求められるようになりました。外壁塗装でも、旧塗膜の除去やコーキングの打ち替えを伴う場合には、この調査が関わってくることがあります。知らないまま契約してしまう方が、今でもいらっしゃるように感じています。
前職で外壁塗装の窓口をしていた頃、長野県にお住まいのお客様からお電話をいただいたことを今でも覚えています。築30年近いご自宅の外壁塗装を終えたあと、たまたま別件で解体業者に相談したところ、「この年代の建物なら、本来は着工前に石綿の調査をしているはずですが」と言われ、初めてその存在を知ったそうです。
電話越しのお客様の声は、怒りというよりも戸惑いに近いものでした。「知らなかった自分が悪いんでしょうか」とおっしゃっていたのですが、そうではないんですよね。本来、その説明と調査は業者側が担うべきものです。お客様に非がある話ではありません。
あのときの声を、私は今でも忘れられません。
すべての業者が意図的に省いているわけではないと思います。外壁塗装は小規模な工事も多く、対象になるかどうかの判断が難しいケースがあるのも事実です。ただ、調査には有資格者への依頼や一定の手間がかかるため、価格を抑えたい業者ほど、そこを曖昧にしてしまう傾向があるように感じています。
業界に身を置いて20年ほどになりますが、こうした法令に関わる部分をきちんと説明してくれる業者と、価格の話しか出てこない業者とでは、工事全体に対する姿勢がやはり違うと感じることが多いです。
難しい専門知識を持つ必要はありません。ただ、「事前調査はされますか」「うちは対象になる工事内容ですか」と一言尋ねてみるだけで、業者の対応は大きく変わってくるはずです。きちんとした業者であれば、調査の要否や結果を書面で示してくれます。
築年数が古いお住まいほど、この確認は意味を持ってきます。色やデザインの打ち合わせに気持ちが向きがちな時期だからこそ、契約前のこの一言を、ぜひ加えていただきたいと思っています。