忘れられないお話があるんです。
埼玉県のあるお客様から、塗装が終わって一年ほど経った頃にお電話をいただきました。「壁はとてもきれいになったんです。でも、エアコンの配管に巻いてあるテープがぼろぼろで、そこだけ古い家みたいに見えてしまって」と。外壁は明るいクリーム色に塗り替えたばかりで、そこを灰色にくすんだ配管が斜めに横切っていたそうです。
お話を伺うと、工事のときには配管をビニールで包んで養生し、塗り終わったらそのまま外しただけ。配管については見積もりにも打ち合わせにも一度も出てこなかった、とのことでした。業者さんが手を抜いたというより、「配管は電気屋さんの範囲」という線引きのまま、誰も気に留めなかったのだと思います。
お客様は「言えば何とかしてもらえたのかもしれないけど、何を言えばいいのか分からなかった」とおっしゃっていました。この一言が、ずっと心に残っています。
エアコンの配管まわりと一口に言っても、見ていただきたいところは大きく三つあるんですよね。
一つ目は、配管に巻かれている化粧テープ。紫外線に弱く、日当たりのいい面だと数年でひび割れたり、ほどけて中の保温材がのぞいたりします。二つ目は、配管を覆うプラスチックのカバー(化粧カバーと呼ばれるものです)。割れや色あせがあると、塗りたての壁の横ではどうしても目立ってしまいます。そして三つ目が、配管が壁を通る穴をふさいでいるパテ。これが固くなって痩せると、すき間から雨水や虫が入りやすくなることがあるんです。
どれも外壁塗装そのものではありません。ただ、足場が立っていて職人さんが壁の際まで近づける時期は、こうした小さな傷みに気づける数少ない機会でもあります。
前職で施主様と業者さんの間に立っていた頃、こんなことがありました。塗り替えから二年ほど経ったお宅で、「エアコンの下の壁紙にしみが出てきた」というご相談です。
業者さんに見ていただくと、配管の穴のパテが割れて、細いすき間ができていました。そこから雨が少しずつ入っていたようです。塗装のときにパテの状態まで見ていれば、ほんの小さな手間で済んだかもしれない。そう思うと、何とも言えない気持ちになりました。
もちろん、塗装の業者さんが配管まわりを全部やってくれるとは限りません。テープの巻き直し程度なら一緒に対応してもらえることもありますし、カバーの交換となると電気工事やエアコン業者さんの領分になる場合もあります。大切なのは、誰がやるのかを工事の前に決めておくことなんです。
難しいことはありません。
現地調査のときに、「エアコンの配管のテープやカバー、穴のパテは今回どうなりますか」と聞いていただくだけで十分です。良い業者さんなら、写真を撮って状態を説明してくれたり、「ここは巻き直しておきますね」「カバーは別の業者さんの方がいいですよ」と、分かりやすく答えてくれるはずです。
あわせて、使っていない古い配管や、昔のエアコンの穴が残っていないかも見てもらうといいと思います。塗装の前にふさいでおけば、仕上がりもすっきりしますし、あとから気になることも減ります(費用がかかるかどうかも、その場で確認しておくと安心です)。
家の外まわりには、こうした「誰の担当か曖昧な場所」がいくつもあります。小さなことでも遠慮せず聞いていただきたい。お客様からそのひとことが出るだけで、工事後の「こんなはずじゃなかった」はずいぶん減ると、私は思っています。